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宝物

  宇宙への扉を開いてくれたのは、父の手作りによる天体望遠鏡。父には悪いけれど、屈折式経緯台の簡易版とは言えたものの、ファインダーは付いてないし解像度も低かった。まあまあ月面観測はできても、土星のリングをキャッチするのは無理。「宝物」と呼べない望遠鏡は子供部屋の「飾り物」となり、悲惨な末路をたどる。相撲を取っていた私と弟が望遠鏡に激突し、真っぷたつに折れた。父の逆鱗 (げきりん) に触れて2人は家の外に出された。高校1年の秋、某光学機器メーカーの工場で購入した反射式赤道儀 (口径100mm)。これこそ「宝物」。ところが、架台に選んだ鉄柱の重量がハンパなく (キャスターなし)、マンションの屋上に固定したまま動かせない (今もそのまま)。やむなく野外用のカーボン三脚も買い、観測用具とテントを自転車に括り付け、郊外に出て組み立て作業を始める。暗がりではラーメン屋台の設営に見えたらしく、酔っ払いが何度も近寄ってきた。「天体観測です」と反応すると「気取ってんじゃねぇよ!」と絡まれることもしばしば。「すいません! 閉店なんで、またあした!」と煙に巻いて、次の日は場所を変えた。星空を眺めながら深夜放送も聞いた。当時の人気DJ落合恵子さんから頂いた自筆のイラスト入り返事。これも「宝物」の一つ。 (SS) ▽メンコ、ビー玉、牛乳のフタなど、子どもの頃、たくさんの宝物を集めていた。溢れんばかりの戦利品をみかん箱から取り出して、得意げに見せびらかして喜んでいた。「本当に男勝りだよ。大切なモノ、お腹の中に忘れてきたんだよね」と、家族が苦笑いしていた。▽アメリカに来るとき、東京のアパートの荷物を実家の店の倉庫に置かせてもらった。「ごめんね〜。暴走族のタバコの不始末で荷物が燃えてしまったのよ」と母から国際電話があった。お気に入りのレコード、アルバム、着物、千趣会で集めた嫁入り道具など、10年間の青春の宝物がぜんぶ消えてしまった。でも、時間の経過がそうさせたのか、あまり悲しくなかった。▽「すごい豪邸だったよ。使い込んだ料理道具、銀の食器、手作りのジュエリーや洋服、すべてが彼女の宝物なんだって」と、ラホヤに住む知人の暮らしぶりを説明したら「おしゃれで繊細!? あなたにはムリでしょう。なんせ男前だから」と旦那が爆笑した。確かにムリだと思った。▽母はゲラゲラよく笑う人だった。祖父の商売が傾いて、人一倍苦労したはずなのに、磨き抜かれたユーモアのセンスを炸裂させて、周囲を元気にしてしまう不思議な力を持っていた。そして、いつの頃からか、自分も母の文化遺伝子を受け継いで、珠玉の笑いとユーモアが人生の宝物となった。(NS) 人によって、お金で買うことができる、手に入れられる、ビジネス、家、車、、、などは現実的な宝物になるかもしれないが、私にとって大切な宝物は「記憶」かも。母が亡くなってから、毎週土曜日に母国の台湾にいる父との...

秋の記憶

  三島由紀夫が割腹自決した1970年11月25日。底冷えする当日の朝、家の近くに立っていたスギの神木が倒れていた。忘れ得ぬ秋の記憶。三島が16歳で発表した小説『花ざかりの森』を読んでいた中学生の私は、その流麗な文体に感動していただけに、報道写真で彼の生首 (なまくび) を目にした時の衝撃は言葉にならなかった。魔的な死を選んだ “三島の謎” から50年。世間では、右翼思想と武士道への異常な傾倒を原点として三島の行動美学を分析しているけれど、そこが本質ではないような気がする。切腹そのものが目的だったと思う。(ここからは私の勝手な見解です) 言霊 (ことだま) の邪悪なパワーに縛られた不完全な人間は、例えば「醜い存在」というネガティブな契約を自分と交わしながら、どうにか社会と折り合いをつけ、規範を超えない善良な小市民に自らを育て上げる。一方で、森羅万象を言葉にしたい天才文士の深い欲望は、自分の流儀で死を獲得する瞬間に満たされ、完璧な表現者として軽々と社会を超えていく。冥界で『切腹』という小説を書いている三島の姿が目に浮かぶ。武士道に殉じたというより、文士道を極めた、ニーチェの言う「超人」。顕界 (げんかい) と魔界を遮断する神木が同じ日に倒壊したのも象徴的。妖気...

  数年前までは「死」と「来世」の謎が深まるばかりだった。▽祖父、祖母、父、妹の死を迎えて、ある謎に囚われていた。日頃の気苦労が強面 (こわもて) に滲み出ていた厳格な祖父。慢性の胃病に苦しんだ祖母。血族との相続争いに明け暮れた父。繊細すぎる感性が災いして精神を病んでしまった妹。生前の4人は「苦」の真只中にあり、死の影に怯えていた。臨終の刹那 (せつな)、皆に共通していたのは、優しすぎる微笑を浮かべて幽界へ旅立ったこと。苦の連鎖から逃れた安堵感には違いなかろうが、どんな世界で、何を見たのだろう? ▽今では、不幸・不遇に身を預けずに、自分で意味を見つけてユーモアに解し、自ら態度で示して人生に答えたい…と思うようになった。しかし、この「態度で示す」が実に難しい。私たち夫婦は、どちらかが死期を迎えたら、これまでの愉快な話をしながら、笑って見送ることにしている。「人生組曲の最終楽章をどう演奏して、幕を降ろすべきか」などと、大上段に構えるのをヤメた。お笑い芸人が (誰だったか?) 「死 (臨終) は落語のオチに似ている」と言った。劇的な結末ではない、少々気抜けしたような「あ、終わっちゃったな」というような。死はそんなものか?...

失敗

  ▽私の初恋は7歳。小粋に着こなした柄の良いシャツ、端正に折り曲げた上着の袖口、都会的でスタイリッシュなベレー帽がチャームポイントという、ボーイッシュな魅力に溢れる少女だった。彼女宅の郵便箱の上にそっと “初恋文” を置いて (中に入れましょう!)、木陰から成り行きを見守る私。すると、手紙は一陣の秋風に吹き飛ばされ、優雅な弧を描きながら舞い落ちて、枯葉の中の「紙切れ」となった。そして、家から出てきたお婆さんに電光石火のごとく掃き捨てられてしまった。その絶妙なタイミングと手際の良さに呆然とし、この思いは通じないと確信。この失敗がトラウマになったのか、以来、私はラブレターというものを書いたことがない。 ▽私が入学した私立高校は附属中学エスカレート組を合わせて首都圏出身者が約8割を占めていた。残り2割は私を含む地方出身者で、都会の事情に疎いばかりか、言葉の端々 (はしばし) に出る地方訛 (なま) りに気後れを感じていた。入学直後に有志が集まり、喫茶店で親睦会が開かれた。私には初めての喫茶店体験。皆がナポリタンやカレーピラフをオーダーする中、カツ丼を注文した私に...

故郷 ふるさと

▽阿武隈川の畔 (ほとり) に建つ福島の生家が道路拡張計画で取り壊されたのは四半世紀前。私が産声を上げた「離れ家」は公共駐車場の一部となり、コンクリートが敷き詰められて、寒々とした空間が広がっている。その界隈に並んでいた家屋・店舗も姿を消してしまい「故郷とはかくやあらん!」という情感が湧いてこない。心象風景が消失してしまえば「そこは故郷にあらず」と、つくづく思った。▽あまりにも鮮烈な故郷の記憶がある。 ① 5〜6歳の頃、家の周りで三輪車に乗って一人で遊んでいた。家の前を通る旧国道に “魔のT字路” があり、子供の私は大事故の瞬間を数回目撃している。母子が撥 (は) ねられた後、警察官に「坊やは見ていたね。その様子を話してくれる?」と尋ねられても、怖さのあまり、三輪車をキコキコと漕ぐばかり。キャラメルをもらっても、幼い目撃者は無言のままキコキコキコ。②...

メール/手紙/便り

総領事館経由で分厚い国際書留郵便が届いた。米国で三度の lawsuit を経験している私は、書留郵便 = 訴訟通知というイメージがあるので、嫌な予感がした。福島地裁からの民事訴訟関連書類。日本で裁判沙汰? それは土地問題に絡む “事件” だった (相続処理が済んでいるのに、何故?)。想定外の内容。話は昭和6年...

とりあえず

▽ 妻がジョギング中に転倒し、コンクリートに右頬を強打。みるみる腫れ上がり、ハロウィーンが前倒しで到来したような恐ろしい形相になった。外来診療が制限されているので、オンライン診断で患部の拡大写真を添付し、医師の判断を仰ぐ。顔面の骨折はなく、軽症の打撲との見立て (!)。異変があれば再診すると言われ、とりあえず、冷却して様子を見ることに。すると、驚くほど急速に腫れが引き始め、3日目には擦り傷が薄く残るだけで、ちょっと見では普通と変わらなくなった。「スゴい回復力だね」 と言うところを「サイボーグみたいだね」と口を滑らせてしまった。言い直したが反応なし。▽ 外出制限令が出た頃、私の髪は伸び放題だった。通販で 「ヘアトリマー」を購入したが上手く切れない。30年前に買った「簡易散髪機」(バキュームで頭髪を吸引してカット) は髪が痛いばかりか、轟音がガンガン響いて、キ —— ンキ...

最近のマイブーム

▽幼少期から虫歯に悩まされている。歯科医院で歯石除去をした時に9本見つかった。“ You have a sweet tooth, don't you? ”(甘党だね)...

点と線

(*食事中の方は内容ご注意。あしからず) 小学校時代の聴力検査。「ピッ」 という短音と 「ピー」 という長音に強弱をつけながら発信し、 微弱音をどこまで聞き分けられるかをテスト。発信音は電気的な振動としてオシロスコープのスクリーンに表示され、児童たちの反応を見て聴力が判定される。私の右耳は何も聞き取れず、スクリーンの前に来るように言われた。短い音は「点」、長い音は 「線」として点滅される画面を見ても何も聞こえず、右耳は 「重度の難聴」 と判断された。専門病院で点と線のスクリーンによる再検査が行われた。...

いたずら

▽日本に暮らす89歳の母が真夜中の無言電話に困り果てていた。就寝前に呼び出し音を消すことで睡眠不足を防いでいたが、音量を戻すのを忘れて連絡が途絶えてしまい、母の安否を気遣う人たちが訪ねてきたことも —— 。どうしたものか。弟が電話口で演歌を歌っても逆効果。イタズラはエスカレートするばかり。母は50代初めに仏門に帰依して精進を続け、今では入信宗派の高位資格を手にしている。魂を込めて唸 (うな) る母の読経は響きが良く、ビブラートも効いて、深夜に聞けば不気味さもハンパない。ある晩、その懲りない相手に聞かせたら、イタズラ電話はすぐに切れた。▽その昔、私と友人の3人が後楽園球場の (古いな … )...

読み違い/聞き違い

▽とんでもない「聞き違い」の一幕。30数年前、私はイラン芸術振興協会 (のような団体) から、会員が創作した「壁掛け」(タペストリー) の紹介を依頼され、その作品を見せてもらった。表は装飾的な文様が散りばめられ、裏にはアッラーの啓示を受けた預言者ムハンマドの姿が —— 。一針一針打ち付ける高度なテクニックで両面を絶妙に調和させつつ、表裏に透ける色の濃淡を利用し、それぞれを見事な別作品に仕上げていた。タイトルは「The Rebirth of God」(神の再臨)。それを、あろうことか「The...

当たり前

▽COVID-19 … 当たり前じゃない日常が続く。自分と家族の命を守るのが最優先課題。緊張、忍耐、防衛への覚悟。トランプ氏の言う “We’re at war.” の意味がそこにある。しかも敵の姿は見えない。皆と団結して、この “戦争” にどうしても勝ちたい。▽私の父親は「家父長」たる権威を当たり前のように振りかざすカミナリ親父だった。私が幼少の頃、父は夜を日に継いで司法試験の勉強をしていた。不合格を繰り返すうちに神経過敏になり、人格も悪化するばかりで、少しでも物音を立てようものなら、ひどく怒鳴りつけられた。ある夜、斜め向かいの家が...

節約

▽ 人に言えないことも書いてしまう『スタッフ閑談』。私は少ない衣類をこまめに洗濯しながら長年着用している。少し擦り切れたり、穴が開いたり、中通しの白いゴムが見え隠れしていても、使い慣れた下着、靴下、Tシャツは捨てられない。節約家、倹約家というワケじゃない。モノを長く使い続けていると愛着が湧いてしまうのだ。愛用していた茶碗が割れると、しばらく保管して、十分に弔った後で丁重に処分する “儀式” を行う。私にとって「断捨離」 は「断腸の思い」 と同義語。やがて、妻からの “最後通牒” が。「突然倒れて救急車で運ばれても、ボロパンツを穿いてたら、私は他人のフリをするからね!」 確かに恥ずかしい。そのまま息絶えたら、来世で後悔する。成仏すらできない!...

食事

▽ “Stay at Home Order” から学んだもの、再認識した価値がある。外向きの不要不急を控える=内向きの不要不急を充実させる。つらつら思うに、社会的イベント (仕事) は人生の意義 (矜持=きょうじ)...

春の記憶

▽ COVID-19が収束していないのに不謹慎かもしれないが、後世の歴史家は “2020年春の記憶” をどのように回顧するのか考えてみた。 ヒントになるのは “1918年春の記憶”。世界で5億人が感染し、2,500万人が命を落としたスペイン風邪。驚くなかれ、第1波到来時の基本対策は今回とほぼ同じで、経済活動制限、ソーシャルディスタンシング、不要不急の外出禁止、自主隔離だった。徹底しなかったフィラデルフィアでは医療崩壊を招いた。 SD市 (当時人口約75,000人)...

惜しい!

私の妻は仕事に関しての記憶が完璧だ。驚くほどの正確さで山積みの事務処理をこなしていく。ところが、日常生活上の記憶はひどく曖昧で、まるで無用な情報とばかりに、これでもかと間違いを連発する。制限ある脳の記憶量を効率的に使おうと、無意識に切り捨てているのか? 脳の記憶容量は140テラビット (17,500ギガバイト) との説がある (よく分からんが、使い惜しみなど不要なほどスゴイ)。微妙にズレる妻の記憶:①「この人、タイタニックの映画で “I’m the king of...

ひとり/おひとりさま

個人行動を好む私。▽旅の醍醐味はひとり旅。目的地とテーマを決め、詳細な行動表を完成させ、独自の世界観を作り上げて出発。人との出会いも期待していないし、移動中に話しかけられるのも苦手。誰もいない大自然の中を歩いても、寂しさはなく、むしろ景観を独占できる至福を享受している。昔は「哀しい男」「変わり者」と思われたことも。今は違う。SNSの発達で、マニアックな個性が百花繚乱の時代。酔狂が変人扱いされなくなった。▽単独行動を「ソロ活」と呼ぶらしい。「ひとり」を楽しめるのは自身の趣向/嗜好を熟知している人——と最大限に評価してくれるのは「ソロ活コラムニスト」の浅井真由美氏。ソロ活も多彩 (やろうと思えば、ほぼ制覇できるものばかり):1人温泉、1人回転寿司、1人映画館、1人ボウリング、1人バスツアー、1人京都、1人心霊スポット、1人プラネタリウム、1人座禅 (本質的に1人でしょう)・・・全て経験済み。1人中華料理店 (円卓を回して食べる)・・これもできそう。▽楽勝ムードがスッ飛んだ項目:1人スイカ割り!?  臨場感を味わうために真昼の海岸で実演するという。野次馬を近づけない絶対的な環境条件すら保証されていない。ソロ活でも次元が違う。個人行動の意味が根本的にひっくり返っている。悟りを開いた達人の境地だ。私には無理。 (SS) ▽先日、NHKの「ごごナマ」で、マグカップと電子レンジで簡単にできる「おひとりさまご飯」のレシピが紹介されていた。料理研究家の村上祥子さん (77歳) が考案した時短料理ワザで、最近とてもハマっている。具材や調味料を大きめのマグカップに入れてレンチンするだけで、おかずや汁物が簡単にできあがる。彼女が提唱している「1人分冷凍パック」もとても便利。野菜や肉魚を食べやすく切って、ジップロックに入れて凍らせる。凍ったままチンするだけで、主食、おかず、汁物に変身する。作りすぎない、食べすぎない。料理が面倒になってくるシニア世代にぴったりの調理法だ。ふたりでも、ひとりでも、カンタンに料理してシッカり食べていけそうだ。▽父も兄も男やもめになってしまった。「新婚さんいらっしゃい」が大好きで我が家の太陽のような存在だった母、そして、高校の同級生と一緒になった心優しい義理の姉が、相次いで、我が家からいなくなった。配偶者との死別は、人生において最もストレスフルな出来事であると言われているけれど、父も兄も一時期、相当にこたえていた。「配偶者の死。そこからが、あなたの本当の人生です」とは社会学者、加藤諦三さんの言葉。どちらが先に逝くか分からないけれど、おひとりさまになっても、元気に生きる楽しみを今から見つけたいと思う。 (NS) 日本へ留学する前、台湾にいた頃の話。通っていた学校の水曜日授業は「半日」だった...

ギリギリ

▽COVID-19の感染対策に各国の国民性の違いが見られる。米国:CDCがWHOより早く第2波の到来を警告し、第1波より壊滅的な被害が出るという最悪ギリギリのシナリオを提示した。自由を尊ぶ米国民に適切な行動を選ばせて全体の利益 (安全) を守るため、厳しい見通しを正直に伝えるという「現実主義」。日本:ギリギリまで緊急事態宣言を出さず、発令後は政府の要望を聞かない業者の実名を明かすという「恥の文化」の制裁法。ドイツ:大枠で徹底した対策を早期に実施し、1週間40万件ものPCR検査を進め、ベッドを空けた病院への補助金 (集中治療ベッドの新設に1床580万円相当!) を出すという用意周到ぶり。ギリギリの窮地には絶対に陥らないというメルケル首相のリーダーシップが光る。死者も米、仏、伊と比べて1桁少ない約6,800人 (5/1現在)。さすが「統制の国/規律の国」。▽ 時間的、精神的に追い詰められるのは好まない自分だけど、中学校時代は “滑り込みセーフ” の毎日。自宅と学校の距離が遠くなり、全速力で走る遅刻ギリギリの登校を繰り返していた。そんな日々を送っていたら、脚力がついて、学年1、2位の韋駄天になり、一躍、運動会の花形に!(これ実話!)「ギリギリの恩恵」をありがたく受けた。...

本気

仕事はもちろん、遊びも本気 (マジ) で取り組む私の妻。具体的に言うと、2人でゲームをする時など、私は気晴らしに、それこそ遊び半分で興じているのに、妻はガチンコ勝負で私に挑んでくる。私を負かすことに全エネルギーを集中させている。つまり「勝ち」に入ろうとしている。それに気付いたのは出会った頃の35年前、2人でよく出掛けたゲームセンターでのことだった。当時のアーケードゲームは Pac-Man と Space Invaders の全盛時代。私は勝負など気にせずに遊んでいたのに、彼女は全てのゲームで私に「勝とう」としていた。なぜか彼女は、変則的な動きをするインベーダーゲームに私を何度も誘っていた。このゲームが苦手だった私は大差のスコアで負け続けていたが、悪魔のような笑みを湛 (たた)...

危険

新型コロナ情報を追い続けて3か月半。納得できない謎が解けた。長期の外出制限に疲弊する市民。いつまで我慢すれば危険から解放されるのか? イライラ度がMAXに到達する頃、新規感染の横ばい/漸減傾向を頼りに、米国も日本も条件付きビジネス再開に踏み切った。 でも、行政からの指示に曖昧さが残り (クリアなのは感染者数の増減だけ)、疫学者からの発展的見解も聞こえてこない。公言できない危険性を隠している? 新型ウイルスの実態解明はお手上げ? (それは危険すぎる)。COVID-19を制圧できる明快な数理モデルはないのか?・・・それがあった! 西浦博氏 (理論疫学者) が基盤にしている不等式...

笑える

▽“Stay at Home Order”… この期間の運動はどうする? 5.5マイルのウォーキングが私の日課。マスクをしてソーシャルディスタンスを保つなら外を歩いても問題なさそうだが、安全を期して家の中を歩く。約5kgのバックパックを背負い、早足で自分の部屋 → 中庭...

さらば2019 年!

2019 年のニュースで最も興味を引いたのは、OECD (経済協力開発機構) が5月22日に公表した「人工知能 (AI) をめぐる開発者/運用者が取るべき行動指針」に関する勧告だった。簡単に言うなら、個人情報の収集は制限が掛けられるべきで、目的を明確化した上で、本人同意を必要とする原則を宣言。私は書籍購入、ホテル予約、日用品調達に至るまでネットを利用する。私の購買パターンやウェブ閲覧履歴がデータ化され、プロファイリングを通して私の趣味・趣向を予測し、サイト側から “私の欲しがりそうな” 商品情報が五月雨式 (さみだれしき)...

夏の記憶

「盛夏の灼熱の光は、我らを深く死に導く」 (誰の言葉だっけ?)。夏の太陽は旺盛な生命力の象徴なのに、胸騒ぎを覚える不吉さがある。特に日本の夏。幼少期から今まで、夏に寄せるスリリングな感触は変わらない。湿気まみれの暑苦しさ (諦念)、蝉の鳴き声 (読経)、蚊取線香の香りと煙 (法要) … 前世、現世、来世が渾然一体となった奥深い安堵感かも。COVID-19がもたらす死への恐怖感とは違う。茨城県の漁村 (平潟港) に家族と逗留していた6歳の夏。喫茶店で母とかき氷を食べていると、男児が溺れて行方不明になり、漁村全体が騒然となった。警察と村人総出の捜索が続いたが、少年は見つからない。薄暮に霞む無表情な漁港の海が幸福感を奪い去った。止むことのない蜩...

無駄

自分は集中力を備えているが、要領を得ていないのか、いつも時間が足りない。必須事項を優先的に片付けても、必死に時間を追っている感覚が常に付きまとっている。毎日が忙殺の極限にあるとは思えないのに、興味が多岐にわたってしまうのか、生まれながらに不器用で非効率な人間なのか ―― 。いずれにしろ「無駄の多い人生」かもしれないと自己嫌悪に陥ることもあった。そんな悩みを解消してくれたのが『パレートの法則』だった。イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが提唱した別名「80対20の法則」。例を挙げると、高額所得者トップ20%の合計収入が全体の80%を占める (高額納税者の上位2割が総税収の8割を納めている)。20%の社員が会社全体の売上80%を稼ぐ (優良企業でもこの比率に近いらしい) などなど。大いに共感できたのは、働く時間の実質20%で仕事の80%が終わっている (そもそも実務時間の8割は効率が上がらない)。無駄の真意ここにあり! 集中力が最大効果を発揮するのは短時間で、残りの長時間は必然的に要領が悪くなる。そこで標語を作った。「効率主義必ずしも効率的にあらず。意味のない無駄もなし」。ピッチが上がらない時は、このキャッチワードをお題目のように唱える。 (SS) ▽祖母は渋柿の皮も無駄にしない人だった。「栄養は皮にあり」などと言ったことはなかったけれど、漬け物にしたり、煮物に使ったり、天ぷらにしたり、ほのぼのとした甘さが絶品だった。残り野菜で日持ちのするおかずを上手に食卓に出していた。祖母の「もったいない精神」を忘れてしまったら、それこそ「もったいない」とつくづく思う。▽先日、長年使っていたプリンターを捨てた。「修理しても高くつくから、買った方がいい」とリペアショップで言われた。「修理すればまだ使えるのになぁ」と思いつつ、捨てざるを得ないモノがやたらと多い。そういえば、子どもの頃、鋳掛...