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ペット

  ▽40年を超える米国滞在。思い返せば、自分の生活空間には必ずと言っていいほど猫がいた。近所の飼い猫が垣根を飛び越えて “食客” になるケースがほとんど。実在の飼い主を無視するほど居心地が良いのか、帰らずに居候を決め込んでしまう。猫に縁があるものの、譲渡されたことはなく、私たちも来客を迎えるようにエサや簡易寝床を提供するだけ。隣家は保護猫が集まっているのか、複数の猫が定期的に住み替わり、遊びに来る猫種も様々だった。こんな状況だから、自分たちがペットを飼わなくても動物の “癒し効果” を享受できた。なぜ、我が家に移動してくるのか? 隣りは訳アリの雑居家族で、不協和音が絶えず、朝な夕なに怒号が飛び交っている。猫たちはそんな生活環境から避難してきたのかもしれない。▽日本では10代前半にコーギーの子犬を飼っていたが、明確な主従関係の構築、規則正しい散歩の日課など、求められるルーティーンに負担を感じるようになっていた。やがてネコ派に鞍替え。飼い主としては、犬の「依存性」 より猫の「無頼性」 が気楽だ。生まれながらの独立独行ぶりが、何とも心地良い。「元気か?」「まぁね!」のアイコンタクトで済むからね。▽“家族” として迎えたメス♀のオレンジタビーとは7年2か月を共に暮らしたが、3年前に最期を看取った悲しさが癒えることはない。暫くはネコなしで生きる。(SS) ▽パソコンの画面に向かうと、愛猫がやってきては、好奇心旺盛な瞳でモニターを覗き込んで、時にはキーボードを自らの寝床にしてしまう。そんな彼らの行動に、苛立つことなどできず、まぁ、何をされたって、許してしまうのが、猫を愛する下僕の日常だと思う。締切りが迫るほど、我が家の猫はその魔性をますます発揮する。▽子どもの頃、実家には常に猫がいた。「ミー」と「ブー」、愛くるしい親子猫は、昭和30年代のシンプルな「ねこまんま」で育ち、キャットフードやトイレ用の砂、獣医の手も必要とせず、健やかに暮らしていた。毎晩、私と一緒に眠り、小学校への道すがら、跳ねるようにして見送ってくれた。▽アメリカへの移住を経ても、猫との不思議な縁は切れることがない。ワシントン州の学生寮で出会った「マサヨシ」は、冬のある日、雪をかぶって窓辺に現れ、私の心を暖かくした。サンディエゴで迎えた野良猫「ピピ」は、すぐに我が家の一員となり、福猫となった。彼女とともに昼寝をする時間は、日々の忙しさを忘れさせてくれる至福のひとときだ。耳の後ろを優しく撫でれば、ピピは満足げに喉を鳴らし、その穏やかなゴロゴロ音が周囲の喧騒を遠ざけてくれる。猫との時間は、幸せが温かく、柔らかいものであることを教えてくれる。彼らは、言葉を超えて、生きとし生けるものにとって、大切なことを伝えてくれてきた気がする。...

ファッション

  ▽日本滞在中に観ていたTV番組が47都道府県の「カテゴリー別・最下位ランキング」を発表していた。「流行鈍感 No.1」の不名誉な栄冠が与えられたのは、私の故郷である福島県 (調査方法は知らず)。長期米国生活者には、県民性がどうの、各県の優劣がどうの——なんてのは重箱の隅を突つくナンセンスとしか思えないが、最悪のファッションセンスに福島が選ばれてしまい、さすがにショックを隠せなかった。▽若い頃の自分はブランドに全く興味がなく、流行オンチを地で行く、野暮天を絵に描いたような青年だった。それが還暦を過ぎ、老年世代の仲間入りをしてからは、オシャレは Quality of Life の重大要素と思えるようになった。自分にどれだけ余生が残されているのだろうか? 計測できない「寿命のマジックナンバー」を恐れず、可能な限りファッションセンスにこだわって死を迎えたい——そう考えている。▽大層なことを言っても、私は今でも黒/紺系統に身を包むくらいで、流行オンチに変わりはない。誰の言葉か忘れたが、ファッションとは人間の本質を露出する覚悟を伴う勇気ある行動らしい。シンプルな服装でも自己の特質を表出できたなら、それこそが見事なオシャレ。三島由紀夫氏が生前に「私らしさのファッションは10年前の流行を着ること」と言っていたが、なるほど・・妙な説得力があった。 (SS) ▽黒いタートルネックとジーンズ。アップルの創始者、スティーブ・ジョブズはいつも同じ服を着ていた。「服を選ぶための時間を、仕事に使いたい」というのがその理由らしい。ジョブズだけでなく、オバマ元大統領、マーク・ザッカーバーグ、経営コンサルタントの大前研一さんも毎日同じ服を着ているとのこと。作家の向田邦子さんは、「同じ服」を「色違い」で、店から在庫がなくなるくらい大量に購入していたという。▽日本に里帰りする度に、街の人たちのおしゃれな服装に驚かされる。それに対してアメリカのファッションは、テキトーだ。流行という概念がなく、安くて良ければそれでOK。自分さえ気に入っていればよく、他人と違うことがむしろ良いとされる。▽私の定番は、ジーパンとTシャツ。かつてはさまざまな服を購入し、クローゼットに溜め込んでいた。痩せたら再びその服を着ることを夢見ていたが、購入した服は長い間、そのままの状態で眠っている。リモートワークが主流になってからは、ヨガウェアが私の定番となった。動きやすく、リラックスでき、そのまま散歩やジム、買い物にも行くことができる。もともと面倒くさがり屋だった私の性格は、長いアメリカ生活によって、さらに磨きがかかった。(NS)...

あの頃

  ▽遠い昔の小学校時代。子供たちに豊かな情緒を涵養 (かんよう) せしめる目的から、文部省 (当時) 推薦作品など2本立てを楽しむ「映画教室」があった。驚くなかれ、教育映画の上映後に青年向けの恋愛映画も児童に見せていた! 舟木一夫、西郷輝彦、橋幸夫が (古くてゴメン) 自分のヒット曲と同名の映画に出演し、ヒロインも20代の吉永小百合、松原智恵子、和泉雅子と華やかな顔ぶれ。純愛がテーマなので、小学生にも無害と判断? 先生たちが見たかった?...

写真

  ▽1枚の古い写真。子供時代の家族旅行で羽田から九州へ飛ぶ前に、機内で撮影した初フライトの記念写真。機長さん、客室乗務員さんと一緒に私のファミリー4人が収まっている。よく承諾してくれたものだ。時代も大らかだったのか? 満面の笑みを湛える父母と幼い弟をよそに、私の表情だけが硬くこわばっている。実は、心の中で「無事に届けてください」と念じていた。半世紀が過ぎても、フライト恐怖症は続いている。航空事故の7割強は離陸時の3分間、着陸時の8分間に集中していると言われ、魔の11分間と呼ばれている。今は、着陸進入する旅客機に空港から誘導電波 (ILS) を送信しているので、安全性が極めて高い。それでも、離着陸時に襲われる緊張感は変わらない。妻が隠し撮りした私の顔は、昔の写真そのまま。▽ポートレートが苦手の私に写真家が秘策を授けてくれた。目立つモノ・・例えば、一房のブドウのような大きめの果物・・を携えてカメラの前に立つと、自分が被写体というプレッシャーから解放されるらしい。自意識が緩和されて、リラックスできるので、表情も柔和になるとか。良いことを聞いた。猫を抱いてみた。すると、撮影直前に暴れ出し、引っ掻かれるわ、噛み付かれるわで、普段は撮れないミラクルショットが手に入った。これは意外性もあって面白い。写真嫌いを克服できるかも。(SS) ▽昔、カメラといえば、コダック一強だった。取材シーンでカメラマンを見かけると、彼らの手にはほとんどの場合、コダックが握られていた。フィルムも現像もコダックだった。でも、1990年代半ば、デジタルカメラの台頭とともに、その風景は一変した。家庭にパソコンが普及し、高性能のプリンターも登場。写真の印刷が少なくなり始めた。そして、2013年にコダックが破綻した。「カメラの歴史を牽引してきたあのコダックが・・」と、仲間うちで話題となった。さらに、2008年には高性能カメラを備えたiPhoneが世に出た。まさしく新時代の到来だった。▽先日、日本の友人からLINEが届いた。彼女が「自分の遺影撮影をしてきた」とのこと。写真館は「おばあちゃんの原宿」として知られる巣鴨にあり、メイクや髪のセットもしてくれるそうで、写真には彼女の魅力が溢れていた。そういえば、母の葬儀の際に「おふくろの良い写真あるか?」という兄の電話に焦った経験がある。手持ちの写真を探しても、集合写真で小さかったり、強風で髪がボサボサだったり。そもそも、どの写真も主役としては写っていなかった。でも「遺影撮影、しときましょうね」と、元気な時に提案するのは、どうも気が引ける。そう考えると、友人の行動は賢明だと感じる。私も日本に里帰りした際に、巣鴨に行ってみようと思う。(NS) この夏、数年ぶりに日本に帰省した際、叔母夫婦に会いに行った。「後期高齢者になっちゃったわよ」と愚痴 (グチ) る叔母だったが、まだまだ若々しく元気そう。夕食後、居間で寛いでいると「こんなにたくさんあるのよ、どうしよう」と、叔母が数冊のアルバムと大きな箱を抱えて現れた。私の母たちの子供時代から、若かりし頃の祖父母、曽祖父母、親戚、友人、近所の人たちなどの写真の数々。母と叔母の父(私の祖父)は写真撮影が趣味だったらしく、膨大な数の写真の大半は祖父が撮ったと思われる。母の母(私の祖母)は病気のため40代という若さで亡くなっている。私は会ったことがないのだが、10代頃の祖母の可愛い笑顔、看護師長として働いていた頃の凜 (りん) とした佇まいの祖母は素敵だった。アルバムの台紙に貼られた写真の配置や説明書きは祖父の作業らしいが、彼の几帳面な性格と子供への溢れんばかりの愛情がよく表れていて微笑ましかった。デジタル化してクラウドに保存しておけば、いつでもどこでも見られて便利ではあるけれど、こうやって、ペンで書かれた文字をなぞりながら手に取って見る写真は良いな・・と改めて思った。母たちが子供時代に使っていたというお茶碗とお皿と一緒に、数枚の写真をアメリカに持ち帰った。写真の中では、今は亡き私の母も、はにかんだ笑顔の少女として生きている。(RN) 1999年に京セラが世界に先駆けてカメラ付きの携帯を発売した・・とある。当時はまだ、人々のニーズが熟していなかったようだ。2007年にアップル、2008年にアンドロイドが、所謂 (いわゆる)...

ヤバい

  私の滞米生活も40年を超えた。日本の知人の多くは、米国はケタ外れに治安が悪く、生命の危機に曝されやすいと思い込んでいる (日本も凶悪犯罪が急増中だけどね)。記憶を辿ると、一歩間違えれば、命を落としかねない極限状況に置かれたことが数回あった。▽樺太と同緯度のワシントン州東部で体験した−30℃以下の真冬の凄まじさ。FWYのアイスバーン (路面凍結) に車輪を取られ、高速のままスピンを開始して絶体絶命! 少ない交通量が幸いして減速に向かい、車両後部を中央分離帯に当てて奇跡的に窮地を脱した。他車と衝突してたら・・ヤバい。▽9.11テロ直後、自宅近辺では不穏な騒動が相次いだ。50メートル先には回教徒のモスクがあり、ファナティックな反イスラム勢力が仕掛けた小型球形の爆弾が炸裂! 大音響とともに窓ガラスが割れ、我が家に粉砕物が降りかかった。負傷者はなかったが、うっかり外に出ていたらヤバかった。▽喫煙していた頃、ミニ売店でタバコを買おうとしたら、短銃を持った男が押し入り、女性店主に銃口を向けた。固まっている私に男が叫ぶ。“One more step and...

暑い/温暖化

  ▽地球温暖化ではなく、地球沸騰化らしい。記録的猛暑と大規模な森林火災、異常気象がもたらす農作物の不作と食糧危機、さらに、永久凍土に閉じ込められていた未知のウイルスや細菌が氷河融解で放出され、新たなパンデミックが再来するという恐怖・・。人知を結集しないと、地球生命の臨界点を越えてしまう。先ずは温室効果ガス削減の強化。そして脱化石燃料の実現。微力ながらも、個々人ができることを考えよう ▽昨年の夏に重度の熱中症 (heatstroke) を体験した私。今年の夏も暑い。予防のために麦茶をガブガブ飲んでいたら、衝撃の事態に見舞われた。我が家界隈では大掛かりな上下水道工事が行われ、一時的な断水が何度も起きている。回復後から麦茶を大量に作り、飲み続けていた私は、ふと気づいた! 蛇口から流れる水の色そのものが薄っすらと「茶色」ではないか! 慌てて作業員の1人に苦情をぶつける。「流し続ければ透明になるよ。パイプの塗料が少し混ざっただけ。人体には無害なので心配いらない」 と、涼しい顔で言う。でも、レストランで出されるお冷 (ヒヤ) がこの色だったら飲めないよ!...

繰り返し/リピート

  ▽写真の撮られ方が下手だ。シャッターを切る瞬間に目を閉じるので、パスポートや運転免許証の更新写真が一度で決まらず、撮影を繰り返す。「瞬 (まばた) きをせず、軽く笑顔をつくる感じで、口角を上げて、そのまま!」と言われても、プレッシャーを感じて、思わずレンズを睨 (にら) んでしまう。修学旅行の記念写真でも私は目をつぶった。写真家に聞いたら、集合写真を一発で決める奥の手があるという。先ず、全員に目を閉じさせる (!)。そして「はい!」の掛け声とともに目を開けるよう指示。全員が号令一下で目を開けるので、勢いもあり、半目になる心配もなく、成功間違いなしとか——。▽朝露の香りが立ちこめる中庭に佇 (たたず) み、カリフォルニアレモンと蘭 (ラン)...

旅行

  私は環境の変化に馴染めないタイプなので、旅行移動中に熟睡することができない。周りの人の所作も気になる。新幹線の車中。カシャカシャ、ゴソゴソと耳障りな音。私の座席から通路を挟んだ左側の乗客が、何やら悪戦苦闘中。会社員風の中年男性。テーブルにはKIOSKで買ったと思われる缶ビール、真空パックのチーズ、焼き干し芋。「一人宴会」を始めようとしてチーズを開封したものの、両端が金具で留められたビニールを剥くのに四苦八苦。爪で引っかいたり、捻ったり、二つ折りにしたり、歯で千切ろうとしたり・・。それでも諦めない (その気持ち、分かる)。彼は15分近く格闘していたが、手を止めてビールを飲み始める (諦めたのか?)。いや、チーズは後回しにして、干し芋の封を開け始めた。ところが、切り分けられた芋が袋の中でベッタリと引っ付いて、1枚だけ取り出すのは無理。ベトベトの手をハンカチで拭う。日本の商品は品質管理と衛生基準のレベルが高く、密閉/密封を厳重にしているので、安全性に信頼が置ける。しかし、少々度が過ぎる感もある。疲れ果てた男性はビールだけ飲み干して、チーズと干し芋を抱えながら、哀愁を漂わせて、私が降りる1つ前の駅で下車した。釈然としない結末のドキュメンタリーを観ていたような約30分間。春の旅行中に私が目にした、日本的な光景 (?) の一つ。 (SS) ▽初めての海外旅行がワシントン州への留学で、その後、カリフォルニア州に移り住み、日本への里帰りが定番旅行となった。未だに、ヨーロッパも、アジアも、ハワイもニューヨークも行ったことがない。▽かつて、家族で「西部国立公園ツアー」に参加した。父は空港でカメラを置き忘れ、母は足に魚の目、姪はホテルに上着を忘れるなどのハプニングが続出。私といえば、お腹の不調で、バスの最前席と最後尾のトイレを何回も往復した。渓谷の景色よりも、そんな旅のドタバタが懐かしい思い出となっている。▽コロナ禍で家に籠もりながら、バーチャル旅行を楽しんだ。将来、アバターロボットで月や深海を探検したり、遠くの友達と世界旅行に出かけて、現地ガイドの案内をリアルタイムで体験できるとのこと。さらに、網膜と脳を連動させたフルダイブ体験で五感を活用する旅が可能になると言われている。歳をとって動けなくなっても、新しい冒険が待っている。▽「旅行は計画している時が一番楽しい」らしい。そんな「休暇幸福曲線」をオランダの研究者が明らかにした。旅行中の幸福は2週間限定だが、計画に感じる幸福感は8週間持続するとのこと。ルートや観光地の選定が前頭前野を刺激し、ドーパミンを放出して興奮と意欲が増すらしい。旅から帰ったら、すぐ次の計画をしよう。パッケージ旅行が大好きな自分としては、目からウロコが落ちるほどの発見だった。(NS) 子供の頃、両親が共働きで忙しかったので、家族旅行をした記憶があまりない。でも、普段の休日には母と妹と3人で出かけることが多かった。買い物とランチ、山へハイキング、瀬戸大橋や蒜山 (ひるぜん) 高原までドライブ、冬は年に1、2度スキーに連れて行ってくれた。お盆休み、お正月休みには、よく兵庫県の母の実家へ帰省していた。私が覚えている家族4人の旅行らしい旅行といえば、中学生の頃に訪れたハワイ、山口の萩、高知の足摺岬、それから私が米国留学する少し前にキャンピングカーで岡山県北部へ行った一泊旅行だ。成人して自分が親になってみると、忙しい中、私たちをいろいろな所に連れて行ってくれた母をとても有難く感じる。私も子供たちに多くのことを体験させてあげたいが、時間的制約と経済面でなかなか難しい。日本にも連れて行きたいけれど、なかなか実現しない。この夏、子供たちのクラスメイトは外国へ行くそうだが、私たち家族は北カリフォルニアのグランマの家へ行く。2人とも大喜びで、楽しみにしているので私も嬉しい。グランマと過ごして、プールで泳いで、夏休みをエンジョイしてほしい。私もサンディエゴからベイエリアへ引っ越した友人ファミリーや義母、義父、夫の叔父叔母に会うのが待ち遠しい。義母宅の広いキッチンで料理をするのも楽しい。 (YA) 大抵の人は旅行好きだと思うが、諸事情でなかなか出かけられない人も多々いることも確か。私は東京時代、忙しい仕事のせいで、思うように休みがもらえず、せいぜいが旅程4、5日の近場の外国が旅行先。しかし、その会社を退職し、フリーランスになってからは、世に言う「糸の切れたタコ」状態。暇とお金を遣り繰りしての、大型小型の世界旅行が始まった。東京で遊ぶと高くつく。飛行機代さえ出せば後は格安、と暇に任せて、1年に春夏秋冬、タイのサムイ島に行くなど、かなり人生を遊んで過ごしてきた。物にお金を使うより、記憶にお金を使う。故に、せっせと節約に励んでは旅行に出かける。最近になって、その回数と旅程の長さが増えた。暇とお金は何とかなるにしても、健康な時に行けるだけ行っておこうと、最早イケイケドンドン状態だ。そして、とうとう私の海外訪問国50か国目となるチリに、この春、足を踏み入れた。首都サンティアゴで、世界各地と比べると格安という雲丹...

ドキドキ/ハラハラ

  大型連休を挟んで帰省して、新幹線に乗った。日本では岸田首相襲撃事件の記憶も冷めやらぬ中、G7広島サミットを間近に控え、対テロ厳戒態勢の下で交通機関の取り締まりも厳しくなっていた。私の隣の座席には、レジ袋に包まれた不気味な「何か」があった。そこに乗客はいない。空席? それとも誰かが座席確保の目印として置いたのか? まさしく正体不明の「不審物」。5分、10分、15分が過ぎても人が戻ってくる気配はない。気になりだすと、妄想が際限なく頭の中に広がっていく。中身は何だろう? よもや危険物? 触れたら爆発する? 良からぬ憶測がエスカレートして、居ても立ってもいられなくなった。防護服に身を固めた乗務警備員が来たら報告しようと決めていたが、彼らもなかなか現れない。そのうち「不審物をお見かけの方は、直ちにご連絡ください」との車内アナウンスが流れて、私のドキドキ/ハラハラ度はMAXに達する。いっそ座席を離れようかと思ったが、連休中の混雑から空席が見当たらず、逃げ場もない。命を落とす前に、遺書となるメモを妻宛てに書き残そうかとも考えた。20分も経過した頃だった。ガラガラと耳障りな音を立ててスーツケースを引いてきた大柄の中年婦人が、私の視界を遮 (さえぎ) って隣に座り、袋から特大の弁当を取り出して豪快に食べ始めた。(SS) ▽今年のWBC「侍ジャパン」の準決勝と決勝は、ドキドキ、ハラハラ、そしてヒリヒリした。私は小心者で、自分が応援する選手やチームのゲームをリアルタイムで観戦することができない。彼らが勝利を収めた後に、名場面を繰り返し観る。友人にそのことを話したところ、彼女の夫も同じような傾向があるとのこと。試合後、WBCのハイライトや、歓喜に沸く日本全国のニュースを何度も見返しているらしい。▽50代の8割はどこかに引っかかるという健康診断。特に「再検査」の結果を聞くときはドキドキする。健康オタクの知人は70歳から健康診断を受けないようにしたそうだ。検査の数値に一喜一憂するより、逆に健康診断を受けないことが精神衛生上で良いとの考えのようだ。▽「北朝鮮からミサイルが発射されたものとみられます。建物の中または地下に避難してください」。5年ぶりに沖縄へ帰省していた友人は、5月31日の朝に突如としてJアラートの警報を耳にした。那覇空港にいた彼女は、スマートフォンが一斉に警報音を鳴らし、周囲に響きわたるサイレンを体験。皆が不安げに見つめ合い、空港のスタッフにも緊張が走り、業務が一時停止したとのこと。警報が解除されたのは午前7時過ぎ。「初めてJアラートを聞いたけど、ドキドキしたよ」と友人。万が一のことを考えると不気味だ。何だか、大変な時代に生きていると思った。(NS) 日本に旅立つ当日。ロサンゼルス発の便に乗るため、サンディエゴからLAXへ車で送迎してもらうことに。外の景色を眺めながら、忘れ物がないか、頭の中で確認している私。パスポート、チェック! グリーンカード、チェック!...

忘れた / 度忘れ

  ▽20年ほど前、私は東京・砂防会館で、国政選挙に出馬した南米在住の日系人候補者を取材していた。困ったことに、インタビューの途中で、目の前にいる人物の名前をド忘れしてしまった。慌てて「お名前をもう一度、お伺いしたいのですが」と尋ねると、相手は一瞬「あれ?」という表情をしたが、すぐに「◯◯△△です」と返してきた。私は冷静さを装って「あ、存じています。漢字の表記を教えて頂けますか?」と、意図的な “変化球” を投じて窮地から抜け出した。確かこれは、田中角栄元首相が番記者の名前を忘れた時に使う、お得意の隠し技だった。▽幼少の頃、強烈な衝撃を受けた短編マンガは『鉄腕アトム』より先に発表された手塚治虫氏の近未来SFで、地球滅亡の恐怖を描いた作品だった。核戦争の危機が迫る中、宇宙で発生した暗黒ガスが地球を覆い尽くし、全生物が窒息死する運命に晒される。地球脱出船に乗ろうと醜い争いを始める若者、オセロに興じながら最期の日を静かに迎える老人、隕石の嵐の中で激しくピアノを弾き続ける音楽家・・。最も印象的だったのは「地球上に戦争はなくなった! 平和の到来だ!」と叫ぶ2人の為政者。実際に地球は滅びた? もう一度読みたいけれど、半世紀以上も昔の記憶が消えて、探し当てる術 (すべ) もなし。現代にも通じる、この秀作漫画の題名を忘れてしまった。(SS) ▽週に数回「10時10分テスト」をやっている。紙に円を描き、その中に1から12までの数字を配置し、最後に長短の針を描いて10時10分を示す。CDTと呼ばれるこの方法は、認知症の早期発見に役立つとされている。円や数字、針に異常が見られる場合は要注意とのこと。里帰りして、母の遺品を整理していたら、広告チラシの裏に描かれた美しい時計の絵を見つけ、思わず胸が熱くなった。▽うちの旦那は記憶力が良い。家族や親戚、同僚の誕生日はもちろん、ドラマの登場人物の名前まで正確に覚えている。彼の頭の中では、目に映ったものが映像として記憶されるようだ。この「写真記憶」は年齢とともに衰えると言われているが、それでも俳優の名前さえ思い出せない私から見れば、驚嘆すべき能力だ。▽ポジティブ心理学では、楽天主義者は自身の失敗をあまり詳細には覚えていないとの研究がある。忘れる能力も場合によっては大事なのだ。忘れることが得意な自分は、幸せな人間なのかもしれない。▽世の中には「スーパーエイジャー」と呼ばれる80歳以上でも脳力が若者並みに鋭い人々がいる。彼らの脳は感情や社会性を制御する前帯状皮質が厚く、思考の鮮明さを保っているそうだ。この鋭さを保つ秘訣は、自分の限界をわずかに超える訓練を行うことだと言われている。新たな挑戦が脳を活性化させ、若々しさを保つ鍵となるらしい。(NS) 小学校の中学年ごろまで、かなり、ぼんやりとした子どもだった。あまり記憶にも残っていないけれど、3年生のときは、度々、忘れ物をして担任の先生に怒られていたようだ。担任は50代の女性教師だったのだが、生徒たちにとても厳しかった。覚えているルールは、生徒は教室の後ろのドアからしか出入りしてはいけない (前のドアは先生専用)。椅子に座って先生の話を聞くときは、背筋を伸ばし、絶対に動いてはいけない。両手は膝に置き、指を動かしてはいけない。給食を時間内に食べられなかったら、残りはビニール袋に入れて (食器は給食室に返すので)、教室の奥で完食すること。私はぼんやりしているし、忘れ物もするし、給食も早く食べられなかったので、先生に好かれていなかったと思う。「ボケナス!」と言われて怒られていたし・・。お人好しだったので、それでも先生が好きだった私。3年生が終わった後、その先生に手作りの白いアザラシの縫いぐるみをプレゼントした覚えがある。今、自分が小学生の親になり、子供たちを見ていると、3年生はまだまだ幼い。改めて、先生のしたことは酷...

最近うれしかったこと

  ▽先月、日本へ里帰りして久しぶりに母と弟と郷里で過ごした。母は92歳になった。80歳代の姿しか記憶にない私は、老化の進行や認知機能の低下など、不安の種を抱えて家の扉を開けた。やや腰が曲がり、左耳の聴力が衰えていたものの、その元気な姿 (? ) に喜びを隠せなかった。母は、2年前に交通事故に遭ったものの、約半年間のリハビリ入院で寝たきり生活の危機を克服している。ロボットの動きに少し似ているが、早送りの映像を思わせる歩き方も健在だった。▽時間が許す限り、年老いた母に会おうと思い始めたのは「家族との残り時間を計算できるサイト」 (https://bit.ly/3AMAIgQ) を知ってから。どれだけ、親、配偶者、兄弟姉妹と会って話せる時間が残されているのか? 自分と相手の年齢・性別・職業・同居の有無・社会活動・一緒に行うイベント・対面して話す頻度などを入力し、日本人の平均寿命も換算して結果が出される。 遠く親と離れて暮らす海外生活者は、当然ながら、直接会える機会が先細りしてくる。現在の生活サイクルを変えなければ、今後、私が母と一緒に過ごせる時間は、なんと15時間! ええ〜っ!...

ジレンマ

  生前の父は滑稽 (こっけい) なほど頑固一徹で、いつもジレンマに陥っていた。人一倍プライドが高く、モノを尋ねたり、アドバイスを求めることを一切しない。見かねて進言しようものなら怒鳴られる。ヘビー級の時代遅れでもあり、家電音痴もいいところで、不便と知りながらも、旧式の生活から抜け出せない。▽VCR (懐かしい!) でTV録画をするにも、予約機能を無視し、猛ダッシュして Record ボタンを押しまくる。携帯電話がほぼ全家庭に普及しても、固定電話から離れられない。父に内緒で家の「固定」 を処分して「携帯」に替えたところ、子機をTVリモコンと間違えて怒りまくる始末——。ある日、落雷で携帯が故障してしまい、父の憤怒が頂点に達して一喝!「業者に電話して、すぐに来てもらえ!」▽ホテルのフロントでカードキーを手渡された父は、どうにかオートロックのドアを開けて入室できたものの、室内照明をONにする方法が分からない。部屋のカード受けに差し込む発想など出てこない。誰かに聞きたくもない。薄暗い中で憤然としていたら、別の要件でフロントから電話が来た。渡りに船とばかりに「ライトはつかないし、スイッチもない。どうなってるんだ?」と不愉快そうにクレーム。そんな父を相手に丁寧に説明してくれて、問題解決。困り果てて、近くのコンビニでロウソクを買いに行くつもりだったらしい。 (SS) ▽「新しい技術や発明品が登場するたびに、批判がでるよね。自動車やパソコン、スマートフォンもそうだった。最近では、チャットGPTだね。イノベーションのジレンマをモロに感じる」と、AIに詳しい友人からLINEが届いた。そして彼曰く、「次に開発したい製品は、出来た文章を見直して、AIの回答を巧妙にボカすソフト。使ったことをカモフラージュできるソフト」とのことだ。▽「ヤマアラシのジレンマ」の寓話を、新入社員のときに、会社の先輩から教えてもらったことがある。相手に自分の温もりを伝えたいと思っても、身を寄せれば寄せるほど、体中のトゲでお互いを傷つけてしまう。でも最近、そんなジレンマが、必ずしも常に起こるとは限らないことを知った。実際のヤマアラシが仲間と密着して、温もりまくっている写真をSNSで見つけた。なんだか、とってもホッコリした。▽私と夫は、コロナワクチンを4回接種した。だけど、5回目の予約は、接種日の当日にキャンセルした。オミクロン株対応ワクチン接種後に、男性が原因不明で死亡したという記事を読み、ロシアンルーレットのような不安を感じたためだ。考えてみると、この3年間の新型コロナとの関わりは、ジレンマの連続だったような気がする。(NS) おおらかにのんびりと育ててもらった。大きなジレンマで悩んだことがないと思う。アメリカが好き、アメリカで生活がしたいというだけの理由で留学した。そして、アート系が好きだからという理由だけで進路を選び、グラフィックデザインが身に付いたから、その道の仕事についた、という感じだ。楽観的な性格なので、失敗やリスクは深く考えずに行動する傾向にある。悩まない。そういえば、日常のどうでもいいジレンマはたまにある。私の住居のコンドは円形になっている。駐車場も建物を囲むようにぐるっと円になっていて、出入口は一箇所のみ。私のパーキングスポットは出入口から近いのだが、たまに出かける際に、ゴミ収集車の来るタイミングと重なって通れなくなる。出入口付近でゴミ収集車が、コンドの真正面にある巨大なゴミ箱を持ち上げている間、結構待たされる。そんな時、駐車場内を反対側に大回りして、出口まで行くと通れるけれど、小回りして出口まで来ると、すでにゴミ収集車が移動済みだったりする。急いでいるときは、待つべきか、回るべきか、ジレンマに陥る。...

スマホ

  私は「スマホ後進族」だ。GPS機能やモバイルペイメントの便利さを知りながら、その恩恵に預かっていない。一方で、写真や動画をクラウド上に日常的にバックアップしている。これは重宝! スマホで最も活用しているのはメッセージングアプリ。グループチャット機能の素晴らしさ! 弊害もある。個人的な、どうでもよい、取るに足らぬコメントや写真を際限なく送信してくるヤツもいて、対応が面倒になり、辟易 (へきえき) することもしばしば。しかしこれ「明日は我が身」の危険な落とし穴。一番の通信相手は妻。一つ屋根の下に居ながら、興味深い情報を LINE で送り合う。単身で日本に帰国した時など、妻への発信が大幅に増える。非日常の環境に置かれると、見るもの、聞くもの、全てが新鮮に感じられ、逐一報告したくなるのが人情。返信する妻の煩わしさを気遣うことも忘れて、夜遅くまで送り続けてしまう。妻は姪がくれたスタンプをよく使う。ホッコリした印象を相手に与える可愛らしいイラストも付いている。好感度が高く、円滑なコミュニケーションが進む。しかし、同じ表現のスタンプが繰り返し送られてくると要注意。そこに真逆のメッセージが込められている。「おつかれさまです」× 2=「もう聞き飽きた」。「すご〜い」× 2=「あんたが大将」。「ゆっくり休んでください」×...

変化

  ▽森下仁丹が1960年代に売り出した、口の中に強烈な「仁丹」の香りが広がる、その名も「仁丹ガム」は子供にも大人気だった。小学校低学年の私は、薬局で買える異質さと相まって、ガム1枚と同サイズの「おまけカード」の魅力に取り憑かれた。新車を写真で紹介するカードが欲しくてたまらない。小遣いを注ぎ込んで集めたカードを毎日のように眺めながら、クルマへの興味を募らせていく。そして、子供には難しすぎるジープのプラモデル製作に挑んだ。説明書を読み込んで、無数のパーツを丹念に組み立てて、接着と塗装に細心の注意を払いながら完成。雨の日で湿度が高く、塗料を乾かそうと、電気コンロの前に放置していたら溶け始め、気が付けば、私の労作は無意味なオブジェに変化していた。あの日を境に、車への興味と知識は消えた。▽私の印象は人によって全く違うらしい。真面目な人、面白い人、怖い人、飄々 (ひょうひょう) としている人・・。同時多発的に変化する、私という男の “人物描写”。酷いものになると「地獄から這い出てきたような人」というのもあった。(若い頃はガリガリに痩せていて、ムンクの有名な絵画『叫び』 の顔真似が得意だった) 「人格を一元化する必要はない」とウソぶく私を尻目に、「史上最強のマイペース男」という一言で、私の人物評が一致しない謎を解いたのは妻だった。 (SS) ▽「ビッグデータの進展によって、スポーツも変化しているんだよ。例えば、野球投手の変化球。大谷のジェットスライダー、ダルビッシュの消えるツーシーム、あれは魔球だね」と、MLBに詳しい友人から聞いた。ここ数年、センサーを用いたデータ分析が進み、投手たちは自分の投球を改善し、新しい球種を生み出しているそうだ。我らがパドレスのダルビッシュ投手は、頭脳派ピッチャーの代表格で、変化球の魔術師として有名だ。チーム最年長の36歳だけど、進化が止まらない。▽「先日、高校の同窓会に出席したら、30年前とは全く違う顔つきの人ばかりで、ビックリした」という友人からの LINE に集合写真が添付されていた。老化の進み具合は人によって異なるが、玉手箱を開けちゃったような人もいれば、まるで時間が止まっているような人もいる。「でも、本質は全く変わっていなかった。見た目は変わったけれど、内面は変わっていなかったよ」という友人の言葉に救われた気がした。▽モノの本によると、人間の行動の約半分は習慣として行われているそうだ。習慣を変えることは、生き方そのものを変えることになるとのこと。しかし、脳は大きな変化を嫌うようだ。だから、日常生活にちょっとした変化を取り入れることが大切なんだとか。その繰り返しが、やがて、大きな習慣に成長するのだそうだ。(NS) 最近、小学生の息子が原石や鉱物に興味を持ち始めた。何も予定のない休日に、時々、息子と娘を連れて、散歩がてらオールドタウンに赴く。無料のミュージアムに入り、興味のあるお店を見て回り、風景や建物の写真を撮り、トルティーヤスタンドで出来立てのトルティーヤを買い食いしたりする。必ず行くのが...

卒業しました/卒業したい

  ▽話しかけるだけで、TVや照明の turn on & off などを実行する音声アシスタントが一般家庭に浸透した。雑談の相手もするので、意地悪い質問への対応に興味が湧く。ある機種に「◇◇、人気のあるオススメ映画を教えて」と、間違えたフリをして、他社製の名前で何度も呼びかけた。すると「私は◇◇ではありません。◇◇に尋ねてください」と不機嫌そうな (?) 反応を示した。「私と結婚しませんか」と悪ノリしたら「友達のままでいましょう」と切り返された! (敵もさる者)。面白くて、毎日続けていると、妻が「いい加減に卒業しなさい。人間と話してくれ」。▽米国のベンチャー社...

リラックス

  ▽還暦を過ぎても、私は効果的な relaxation の方法論を獲得していない。時間に追われ、時間を追いかける、因果な枷 (かせ) を掛けられた「締切生活」を続けること30数年。休日を設定しても、何かしら “仕事” を持ち込む長年の習性が顔を出し、ストレスの高い日常を制することも儘 (まま) ならない。丸一日働いているワケではないのに、この始末・・。リラックス不適応と呼ぶべき...

マイブーム

  10代から続いているマイブーム。▽我ら「駅弁ファン」にはそれぞれに異なる流儀がある。大食漢のMは猛烈な勢いで2〜3個を車中完食。私は風光明媚な通過点を事前に調べて、車窓から眺めながら静かに味わう。Hは私と似ているが、極上の景勝地に途中下車し、自然の中で食べるのが最高らしい。マニアックなTはすぐに箸をつけず、中身を一つ一つ撮影し、メモを取ってからゆっくりと食べ始める。(それで終わらない)  帰宅後に食材を買い求め、自分で本物そっくりの弁当を作ってしまう。それが至福の時というから恐れ入る。駅弁愛好家でも方向性がまるで違う。▽「電波マニア」の私は旅先で地方局を受信して楽しんでいる。ネットで高音質の放送が聞ける時代とはいえ、受信機で微弱な電波を探し当てて聴くのがラジオの醍醐味ではなかろうか。私はそれを「ラジオの風情」と呼んでいる。アメリカでは大学構内にも低出力のTV・ラジオ局がある。30年ほど昔、UCSD-TV (当時35ch。今もあるのかな?) が、毎週土曜の昼過ぎから宵の口まで、黒澤明監督の作品を連続放映していた。初めて『七人の侍』『生きる』『赤ひげ』を観て感動し、私を邦画ファンにさせた。変人扱いされそうだけど、今でもTV・ラジオの送信所を見つけると必ず立ち寄り、アンテナを背景にして2〜3枚自撮りする。電波塔にも異常な愛着がある。 (SS) ▽最近、アボカドにハマっている。沸騰した牛乳に10分間煮るだけで、硬いアボカドが、完熟状態になる。こんなすごい技を、知人から教えてもらってからというもの、いろいろな料理に使っている。なんでも、NHKの番組で放送されていたとのこと。硬すぎたり、柔らかすぎたりして、取り扱いが面倒だったアボカドだが、硬いのは自分の頭だった。▽教育系 YouTuber が紹介していたTIME TIMER。残り時間が「視覚的」に分かるこのタイマーの使い勝手がとてもよい。アラーム音をOFFにして、タイマーを25分に設定して作業を開始し、時間になったら3~5分の休憩を取る。集中していると、タイマーを忘れて、長時間没頭状態。残り時間が一目瞭然なので、想像以上にストレスがなく、作業に集中できる。アメリカで20年以上前に子ども向けに開発されたとのことだが、大人こそ使うべきだと思った。▽日本の友人が送ってくれた2枚刃ピーラー「キャベピィMAX」を使いまくっている。トンカツ屋さんのように “ふわふわ”...

引っ越し

  ▽東京郊外のマンションへ引っ越した頃のエピソードが忘れられない。真夜中のエレベーター。乗り合わせた仕立ての良いコートに身を包んだ男は、その端正な面差しをサングラスの奥に隠して同じ階の一室へ姿を消した。芸能関係者と分かる華やかな風貌。彼は1970年代のアクションドラマに出演していた準主役級の人気俳優Tさんで、そこに若い愛人を住まわせていたようだ。管理人が不在の時、女性宛ての宅配物を預かっていた私は、誰も受け取りに来ないので、併記されている☎︎番号をかけた。彼女が出た瞬間、うっかりして「Tさんのお宅ですか?」とやってしまった! ガチャン! その女性はひっそりと転居した。小包の中身は果物。娘を心配している母親からの贈り物? そう思うと、他人事ながら切なくなり、差出人へ返送することで私の役目を終えた。何がしかの料金を支払って。▽カードキーで出入りするホテルのような最新式の新居に従姉妹 (いとこ) が引っ越した。えっ! 転居初日にそれを紛失? 防犯上からも再発行に厳しい制約が掛けられて厄介なことに。旦那にバレる前に自力で見つけようと、血眼 (ちまなこ)...

AI/テクノロジー

  ▽デジタル技術と生活圏の融合が進み、創造性の低い業種をAIが肩代わりする「第四次産業革命」の第1ピークは2030年頃に訪れる。人間とテクノロジーの “協働体制” という言葉は影を潜め、AIが人間界を淘汰する “技術的失業” の必然性に誰も異議を唱えない。悲しいかな、編集者も消えゆく仕事の一つだ。▽日本の弟が「0%ノンアルも注文できる」と言って、下戸の私をスナックに連れ出そうとする。場違いと知りつつ、社会勉強とばかりに同行した。「兄貴はアメリカ帰りなんだ」と弟が私を紹介した刹那 (せつな)、ママさんは「その手は古いわよ」と返してくる。(どんな手だ?)  当意即妙な会話のキャッチボールがスナックの粋 (イキ) なルールらしい。客の心情を読み取り、愚痴っぽい話も柔軟に受け止めて、臨機応変に振る舞いながら、人情の機微を知り尽くしたかのように「癒し言葉」で包み込む。なるほど~見事なものだ。ロボットには到底できない、生身の人間だけの芸当のような気がする。AIが長足の進歩を遂げ、仮に人間の知能指数...

新年

  当たるも、当たらぬも、年の初めは星占い。3月24日に冥王星が宝瓶宮へ進む。今後240年続く、占星術上の大転換期「宝瓶宮時代=水瓶座時代」の幕開け。権威主義から人道主義へ。ヘゲモニーに抗 (あらが) う自由の希求へ世界が動いている。冥王星は6月12日に磨羯宮へと逆行するので、覇権を求めて戦火を交える紛争は収まらない。旧勢力 vs. 新勢力の対立激化の暗示もあり (磨羯宮冥王星 SQr 宝瓶宮土星)、ウクライナ情勢が長期化するなどの試練が続きそう。2024年1月22日に冥王星が宝瓶宮へ戻る。そこからが本格的な「新時代」の到来か。AI、IoT の急速な進化でVRの実用化が加速...

2022年回顧

  ▽個人的には平凡な1年だったが、2022年のMLBは面白かった。パドレスが圧倒的劣勢という下馬評を覆し、最強ドジャースをNLDSで倒した “奇跡” の陰に「AI」ありという話。これが少し笑える。ド軍はAI搭載の最新鋭ピッチングマシーン「iPitch」を導入した。対戦投手の球速、スピン率、配球パターンなどのデータを入力すると、実戦さながらの練習ができる。パ軍が進出するとは夢にも思わなかったド軍は、メッツの投手対策に明け暮れたという。初めにパ軍の実力をAIで評価すべきだったね。▽二刀流で2桁勝利/2桁本塁打を達成した大谷翔平と、ア・リーグの年間本塁打記録を塗り替えた (62本) アーロン・ジャッジのMVP争い。Newsweek コラムニスト Glenn Carle のコメントが印象深い。本塁打は「強いアメリカの象徴」という伝統的価値の体現。ジャッジはスーパーマン復活を夢見る米人の心を沸き立たせた。一方、二刀流は「常識を破り個性を貫く」という多様性の実現。大谷の好ましい性格にも共感が寄せられ、米人の異なる本能を呼び覚ました。日本人なのに「米人の理想像になりつつある」と言う。スゴイな大谷翔平。日本人選手がメジャーリーグで前人未到の「道」を切り拓き、新たな価値観をもたらす。そんな日が来ることを、誰が予想できただろうか。しみじみ思う2022年暮れ。(SS) ▽2022年の流行語大賞に、ホームランを量産したヤクルト村上宗隆選手の「村神様」が選ばれた。他には、首都表記が変わった「キーウ」、プロ野球の日本ハムを応援する「きつねダンス」、世論を二分した「国葬儀」、関西人の口ぐせ「知らんけど」、スマホを斜め掛けできる「スマホショルダー」などが選ばれた。サッカーW杯の「ドーハの歓喜」も入れてほしかったが、選考に間に合わなかった。▽「明日やろうはバカやろう」。グズな私の性格を見かねて、先日、友達がこのセリフを教えてくれた。先延ばしをすると、すぐにやるよりも、倍の時間とエネルギーを消耗するらしい。対策としては「スモールステップ」が良いそうだ。「人間の脳は、大きな変化を嫌い、小さな変化は受け入れる」とのこと。2022年が先延ばしオンパレードだった自分としては「とりあえず5分だけやる作戦」をトライしている。▽同居ハムスターが天国へ。すると、愛猫の毛が急に抜けはじめ、ハゲてしまったのであわてて動物病院に行ったところ、獣医師から衝撃的な理由を言われた・・。そんなエピソードが...

復活

  ▽編集業務は意外にタフな仕事。内容〜文章構造〜使用語彙の適切さを見極めるので、文字通り、一言一句に目を通して推敲する。言葉の意味が不明瞭だったり、表現が曖昧で内容が伝わらない時はコラム担当者に確認する。完璧と信じつつ、出版後に間違いやタイポを発見した日には、さながら「勝利ボクサーが判定後に背後からKOパンチを喰らう」「階段を一段踏み外して転げ落ちる」ようなショックを受ける (結構あるのです)。絶望的なのは、自分がリサーチを重ねて仕上げた記事ファイルが損壊して開かない時。どうにか復元・復活できないものかと悪戦苦闘しても、結局、書き直しを余儀なくされる (過去に3度あり)。ところが、今では Mac OS搭載の全的バックアップ機能 Time Machine があるので、時系列をたどって “消失した原稿”...

好感度

  ▽姪の一人は「ガングロ」高校生だった。金髪で、顔に塗るファンデーションは濃い褐色、目の周りと口は白塗り。大人からは眉をひそめられ、不良 (死語だな) の烙印を押されてしまう外見。悪ギャルのサブスタイルを楽しむ理由を聞いたら、驚くべき反応が返ってきた。第一印象が良くないのは知っているという。それが、電車やバスでお年寄りに席を譲ったりすると「うわっ! こいつメッチャ良いヤツなんだ!」みたいな感じで注目され、好感度がブチ上がって得するという。そのギャップが快感でヤメられないそうな。若いながら強 (したた) かな処世術を身に付けていた。▽母を連れて入った飲茶 (ヤムチャ) の人気店は混んでいた。「相席になります」と案内されたテーブルの先客は若いカップル。店員さんが 「ここ、よろしいですか」と尋ねたら「お断りします」と、まさかの返答!...

買い物

  ▽長年使用していた冷蔵庫が故障した。代替品と無償交換してくれる保証書があり、出費せずに新品を得られて喜んでいたが、その「お得感」は時代遅れかも —。IoT (インターネット・オブ・シングズ) の世を迎え、家電製品に搭載したセンサーと通信機能をネットにつなぐことで、日常生活の省力化と利便性が急速に高まっている。将来的には、初めから各家庭に冷蔵庫が無料で配られるという (!)。ミルクやバターが不足すると、センサーが働いて流通業界に情報が送られ、必要品が自動的に届けられる。家電メーカーはマージンを稼ぐ業態へ移行すると予想され、買い物の概念が “製品を買う” から “サービスを買う” へ大きくシフトするらしい。▽人生最後の大きな買い物と言えば、お墓?...